少しだけ映画の話を

配給会社に勤務。つらつらと書き綴ります。

”映画”に惚れる映画『ベイビー・ドライバー』映画評

 

ネットで評判のベイビー・ドライバー

かなり前にはなりますが、初日舞台挨拶にて主演のアンセル・エルゴートを拝んできました。恥ずかしながら彼のことをまったく知らず、黄色い歓声で会場が沸き立つ中、 一人ぽかん顔。

 

確かに若くて優しそうな顔立ちで日本人受けがとても良さそうなお方ですね。

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肝心の映画の内容についてですが、あらすじ等はネットに溢れる情報におまかせするとして、幕開けからエンドロールまで1秒も息をつけぬほどのスピード感とノリを持った作品でした。そして、紛れもなく人を選ばず万人が心躍らせる作品であることは確かだと思います。

 

何故でしょうか。

 

それを万人が楽しめるほど多くの要素を隅々まで最適なバランスで散りばめているからだと思います。

 

フランス映画界の巨匠、ジャン=リュック・ゴダールは「男と女と車があれば映画はできる」と言いました。この言葉は真意はさておき、映画というものは様々なフェティシズム(*1)から作られてきました。ハリウッド超大作として地位を築いた『ワイルド・スピード』シリーズなどがその典型的な例です。街中では滅多に見かけないようなピカピカに磨き上げられたボディ、唸るエンジン音、そしてそのモンスターカーの隣には肌の露出の多い美女。

 

(*1 ここでは本来の性的な意味に限らず、特定のモノに対する強い嗜好という意味で使います。)

 

それなりに車に興味がある人からすればヨダレものの作品です。

ただ本作『ベイビー・ドライバー』は車だけでなく、音楽を軸としてラブロマンス展開やミュージカル調の長回しカット、ありとあらゆる映画的面白さを詰め込んだ作品になっています。

 

車と美女だけでも『ワイルドスピード』のような強力フェティッシュ映画が出来上がるのにですよ。しかし、この作品はただ要素を詰め込んだけではありません。

 

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映画というのは「編集」が作品の良し悪しを大きく決定し得るモノです。

 

ゲッタウェイドライバー(逃がし屋)を主人公とした作品はニコラス・ウィンディング・レフン監督『ドライブ』をはじめ多くあります。それでもこの作品が唯一無二である理由は、詰めに詰め込んだ要素を素晴らしい撮影と編集技術によって綺麗に1つのライン上に整列させているからでしょう。

 

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実際の撮影現場でもシーンで使われる音楽を流しながら演技をしていたそうです。そしてその素材を編集段階でコンマ1秒狂わないタイミングで音楽に載せていく…。

 

少しでも映像制作をしたり、動画編集をしたことがある人であればこれがどれだけ気の遠くなる作業かは容易に想像がつくでしょう。

 

音楽のビートに合わせて役者が演じ、車やコインランドリーまでもが踊り出す。そしてその舞台には僕らの好きなあんなものこんなものが散りばめられているのです。

 

映画ファンなら心踊らずにはいられない定番の展開も、クールな音楽に載せてリミックスすればこれだけ新鮮に面白く感じられるのだと、『ベイビー・ドライバー』を見て驚きました。

 

ミュージカルアクションという新ジャンルを創りあげた監督の熱意と手腕に拍手!!